さて、この辺りから徐々に場面が切り替わり、「飛行士の回想」の印象が強かったのが、今度は「王子様の回想」的な雰囲気に徐々に移り変わってゆきます。王子様は星を離れた原因である薔薇の事について、ようやく飛行士に明かすのです。
これも解釈は様々ですが、一輪の薔薇のモデルとなっているのはサンテクジュペリの妻、コンスエロである、というのがおよそ定説。コンスエロはこの薔薇のように、奔放さと無限の想像力を持ち合わせ、一方で情熱的、きまぐれ、ヒステリックで、人前でサンテクジュペリをなじる事もあったという、激しい女性だったようです。それを思うと、
「そんなしうちをされて、本気で花を愛してはいたのですが、すぐに花の心を疑うようになりました」
この言葉はサンテクジュペリの心の叫びそのもののように思われます。愛と嫌悪感とが心の中で入り乱れ、随分悩んだに違いありません。

「ずるそうなふるまいはしているけど、根はやさしいんだということをくみとらなけりゃいけなかったんだ、だけどぼくはあんまり小さかったから、あの花を愛するってことがわからなったんだ」
次のこの言葉で、サンテクジュペリ自身の心の中にある、コンスエロに対する感情の苦しい両面性が伺われます。
コンスエロもまた、サンテクジュペリへの愛情を、傷つける事でしか表せなくなってしまっている自分に悩んだのではないかと思います。コンスエロのそんな面は、女性なら誰でも持ち合わせている「刺」の部分かもしれません。そんな切ない恋愛経験をした事は、ありませんか?そのような関係になった場合に、互いの苦しみを承知の上で続けて行く事もまた愛情だし、離れる事も愛情である。続けた場合には互いにますます傷つけ合って収集のつかなくなる事の方がおおいし、離れたら離れたで一生残る悲しみに変わる。それを思うと、「人間とは」という大きなくくりだけでは無く、「恋愛とは」「愛とは」という男女間での身近なくくりにおいても、どうも上手い具合にいかないものだなあ、と苦笑いをせざるをえません。
話をサンテクジュペリに戻すと、実はこの「星の王子さま」の物語の半分は他の女性の家で書かれたといいます。無邪気で妖精のようなコンスエロと、母マリーに近い母性的包容力で包み込んでくれる女性達との間で揺れ動き、本当に愛していたのはコンスエロであったけれども、生活を支えられるのは必ずしも愛する相手ではないのだ、というサンテクジュペリの切なる悩みが伺えるエピソードです。
「結婚するなら2番目に愛する人と」とは、うまく出来た言葉ですね。
参考書;「星の王子さまの本」 〜星の王子さまクラブ編 宝島社出版

